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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和38年(ネ)75号 判決

控訴人 神宮司泰蔵

被控訴人 鹿児島税務署長

訴訟代理人 大道友彦 外三名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事  実 〈省略〉

理由

A  各再調査決定に対する訴の利益

控訴人は、被控訴人が控訴人に対してなした(一)昭和三三年一一月二八日付の青色申告申請に対する取消の処分、(二)同年一二月六日付の昭和三一年分並びに同三二年分所得税更正の各処分の取消請求のほかに、これと併せ、(三)、前記(一)の処分に対する昭和三四年三月二日付の再調査請求の棄却決定処分、(四)、前記(二)の処分に対する同年同月同日付の昭和三一年分並びに同三二年分所得税再調査による一部取消の各処分の、取消を求めている。被控訴人は右(三)、(四)の訴は、法律上の利益はないから却下すべきである、と主張するのに対し、控訴人はこれを争うので、まずこの点につき審究する。行政事件訴訟特例法第一二条によれば確定判決(取消判決に限ると解する。)はその事件について関係行政庁を拘束する、とあるから、原処分とこれに対する再調査決定が違法理由を共通にする限り、原処分の取消判決が確定すれば別訴をまつまでもなく、再調査決定は実質上失効する。また同様違法理由が共通であれば、原処分に対する取消請求と再調査決定に対する取消請求が併合提起されたときは、証拠資料を共通にする関係上、一方に対する取消請求が棄却さるべき場合は、他方に対する取消請求も当然に棄却となるし、また別々に提起されても一方に対する取消請求の棄却判決が確定すれば、原告が主張した違法理由が違法でないことにつき既判力が生ずるから、他方に対する取消請求も棄却となることは必然である。これを要するに原処分とこれに対する再調査請求を棄却した決定((四)の再調査請求に対する一部取消の決定により、(二)の更生処分は、当初より一部取り消されたことになるから、現在取り消されずに残つている部分に関しては、(四)の決定は(二)の処分に対する再調査請求を棄却したのと同然である。)が、違法理由を共通にする限り、すでに原処分の取消の訴を提起している以上、これと併せ、または別個に再調査決定の取消の訴を提起することは無意味であり、訴の利益はない、と解される。もつとも本件では、(三)(四)の各再調査決定の取消の訴では、(一)(二)の原処分と共通の実体的違法理由のほかに、右各再調査決定独自の、形式的違法理由、すなわちこれら決定の通知書には理由不備の違法がある旨主張しているので、単純に違法理由を共通にする場合とは異なる。しかしながらこの場合でも原処分の取消判決が確定すれば前記理由により再調査決定は実質上失効するし、原処分が実体上適法であるとしてこれに対する取消請求の訴が棄却されたときは、再調査決定に形式的違法があつても、その再調査決定を取り消すべきではない、と解される(最高裁判所昭和三七年一二月二六日判決参照)から、再調査決定の取消の訴を提起する利益がない、との前記結論に相違を来さない。そうだとすると、本件(三)、(四)の各再調査決定の取消を求める訴は、法律上の利益がないからこれを却下すべきである。

B  昭和三三年一一月二八日付の青色申告書提出承認取消決定の当否

一、控訴人が昭和三〇年分以後につき、青色申告書提出承認を受けたものとして、昭和三一年分所得確定申告額を五、八一二円、昭和三二年分のそれを二万三、五八六円とし、それぞれその年度に青色申告をしたこと、被控訴人が昭和三三年一一月二八日付書面で控訴人に対し、「昭和三一年分所得税の青色申告申請に対する取消処分」の通知をなしたこと、控訴人が右処分を不服として昭和三三年一二月二六日被控訴人に対し再調査の請求をしたところ、被控訴人が昭和三四年三月二日付決定で再調査請求を棄却したこと、控訴人が更に訴外熊本国税局長に対し審査の請求をしたところ、同訴外人が昭和三四年一一月一一日付決定で審査請求を棄却し、翌一二日控訴人に右処分の通知をしたことは、それぞれ当事者間に争がない。

二、控訴人は、「所得税の青色申告申請に対する取消処分」なる処分は税法上の根拠がないし、仮りに右処分が青色申告書提出承認に対する取消処分の意であつたとしても、その真意と異なる文言を以てなされた前記通知は、重大且つ明白な瑕疵があるから、右処分は取り消さるべきである、と主張する。

よつて案ずるに、成立に争のない甲第一号証、原審及び当審証人若松敏夫の証言によると、税務署の職員間では、青色申告書提出承認の取消のことを、通常青色申告申請取消とか、青色申請取消とか慣称していること、本件取消通知書(甲第一号証)は被控訴人に対する原議作成と同時に複写で作成されたものであり、原議とその内容は同一であつて、原議によつて被控訴人の決裁がなされたこと、被控訴人は右原議中の青色申告申請取消の文言を慣称どおり、青色申告書提出承認取消を意味するものとし、これを決済したものであることがそれぞれ認められる。そうすると被控訴人の右原議決済は、原議の文言にかかわらず、青色申告書提出承認取消の意思でなされたものであることは明らかである。ところで一般に行政処分は、(一)行政庁の意思決定、(二)該意思決定の外部に対する表示により成立し、(三)相手方の受領を要する行政処分にあつては成立した行政処分が相手方に到達して始めてその効力が発生すると解される。所得税法第二六条の三によると、青色申告書提出承認取消処分は、右承認を受けていた者に通知することを要するから、右処分は相手の受領を要する行政処分であることが明らかであり、更に右通知以前に被控訴人の意思が多部に表示されたことを認め得る証拠のない本件にあつては、前記(二)の表示と、(三)の到達が同時になされたものであると解される。ところで被控訴人の前記処分の意思が、青色申告書提出承認取消であつたことはさきに認定したとおりであるとしても控訴人に対し、「昭和三一年分所得税の青色申告申請に対する取消」と記載してある通知書によつた処分が、昭和三一年分所得税の青色申告書提出承認取消処分として有効かどうかは、先ず右記載文言が客観的に右処分を表示したものと認められるか否か、もし右記載文言が右処分を表示したものと認められる以上、次に所得税法第二六条の三第一〇項所定の右承認取消の事由があつたか否かの点を考察するを要する。ところで、(一)所得税法上「青色申告申請に対する取消処分」なる文言は存在しないこと、(二)控訴人はすでに昭和三〇年分以後につき、青色申告書提出承認を受けており、かかる者に対し青色申告につき、所得税法上税務署長がすることのできる処分は、青色申告書提出承認に対する取消処分以外考えられないこと、(三)右処分の通知書(甲第一号証)には「現金出納簿を二重に記帳し、売上金額を一定割合減額して簿外予金を使用していた。」との記載があること(右通知書の記載については当事者間に争がない)、(四)現に、後記認定のとおり控訴人は、右通知書による処分は、青色申告書提出承認に対する取消処分であることを熟知していたことが認められること等の諸事実を綜合すると、前記通知書の記載中、青色申告申請取消とある部分は、稍々正確を欠いたものといわざるを得ないとしても、昭和三一年分所得税青色申告書提出承認取消処分を表示したものであつて、これとは別異の処分ではないと認めることができる。控訴人は前記通知書の文言を、「三一年分所得税青色申告者の固定資産に対する減価償却方法を定率法による旨、及びたな卸資産の評価方法を時価法による旨の申請を却下する。」と判読した、と主張するが控訴人援用の証拠を以てしても右の文言を控訴人主張の如く解すべき合理的な根拠を見出すことはできない。かえつて成立に争のない乙第四号証によると、控訴人自身昭和三三年一二月二三日再び青色申告書提出承認申請書を提出していること、該申請書の「参考事項」欄のうち「過去において青色申告書の提出を取り消されているときはその年月日」の欄に、「昭和三三年一一月二八日、但し同処置に対し再調査請求中」と記載していることをみれば、控訴人が前記通知書を青色申告書提出承認取消処分の通知であることを承知していたことが明らかである。

そうだとすると被控訴人の前記処分の通知書に控訴人主張の如き重大且つ明白な瑕疵がある、ということはできない。そこで控訴人に前記法条所定の青色申告書提出承認取消事由があれば、前記処分は控訴人に対する昭和三一年分所得税の右承認取消処分として有効であるということができるわけである。

三、ところで当裁判所は控訴人の昭和三一年分および昭和三二年分の青色申告備付帳簿書類事項には、全体につきその真実性を疑うに足りる不実の事実があると認められる相当の事由があり、被控訴人が昭和三一年分にさかのぼつて控訴人に対する青色申告書提出承認の取消処分をなしたのは相当である、と認める。その理由は下記のとおり附加するほか、原判決二二枚目表六行目より同二三枚目裏七行目までの記載と同一であるから、これをここに引用する。但し原判決二二枚目裏四行目の「普通予金」とあるを「普通予金よりも」と訂正し、同二二枚裏末行の「上京したこと」の次に(ただしこの点当事者間に争がない)を挿入し、同二三枚目表三行目に「同第一八号証の一ないし三」とあるを「同第一八号証の一、二」と訂正し、同二三枚目表一〇行目の「原告」の次に「の家族」を挿入する。

(一)  控訴人及び控訴人家族名義の予貯金が別表三記載どおりであることは当事者間に争がない。

(二)  原審及び当審証人若宮敏夫の証言、同証言により成立を認める乙第一三号証の二、三によると、昭和三三年九月二〇日頃と、同年一〇月始め頃の二回に、当時鹿児島税務署所得税課員であつた若松敏夫が、控訴人方に所得調査に赴いた際、控訴人方に昭和三二年分の青色申告備付帳簿である現金出納簿以外に昭和三二年八月から同年一二月までの現金出納簿があることを発見したこと、右両者の売上金額記載がほとんと一致せず、作為の形跡があつたことが認められる。右認定を覆えすにたる証拠はない。

(三)  甲第一五号証の記載内容は、原判決二二枚目裏六行目より九行目までに掲記の各証拠、並びに原審及び当審証人若松敏夫の証拠と対比して措信できないし、甲第一四号証を以ては未だ控訴人の家族名義の予貯金が控訴人の事業収入により生じたものであるとの認定を覆すに足らない。

(四)  控訴人は、前記事実欄二の(二)(1) (2) 記載の事実を挙げ、右事実によつても、控訴人は青色申告備付帳簿書類に嘘偽の記載をしていないことは明らかであると主張するのでこの点につき以下審究することとする。

(1)  前記のとおり本件青色申告書提出承認取消決定の通知書(甲第一号証)には「現金出納簿を二重に記載をなし売上金額を一定割合減額して簿外予金を使用していた。と理由が記載されていたのであるが、当審証人若松敏夫の証言によると、同訴外人は前記のとおり控訴人方に所得調査に行つた結果、控訴人は正規の現金出納簿に売上金額を減額記入し、減額分を自己あるいは自己の家族名義の予金、積立金に予け入れていると判断したのであるが、これら予け入れ金額中には、日毎、月毎に一定額のものがあつたので、右訴外人の調査報告を基礎にしてなされた右取消決定の通知書の理由欄に、前記のとおり「売上金額を一定割合減額して簿外予金を使用していた」と記載されたものであることが認められる。すなわち表現は適切ではないがその文意は「売上金額から減額してなされた一定額の簿外予金がある、」ということであつて、売上金額に対する一定割合の金額を控除して簿外予金をしていたとの意味でないことは明らかである。前記証人の証言によると、乙第一三号証の二、三は、前記訴外人が控訴人方に所得調査に赴いた際、そこで発見した青色申告備付の現金出納簿以外の陰の現金出納簿と、右正規の現金出納簿の各売上金額を、対照記載したメモであることが認められ、その記載面から前者の売上金額が後者の売上金額より、常に一定割合だけ小額に記載されている事実がないことは明白であるが、前記認定に照らし、このことにより前記通知書の理由が嘘偽であるといい得ないことはいうまでもない。

(2)  控訴人は、別表一記載の昭和三一年分の控訴人の所得額七二万七、九二四円、及び別表二記載の昭和三二年度の控訴人所得額七九万〇、四五九円は、右両年度の本件所得税更正決定の各金額と相違しており、このことは被控訴人が資産負債増減法により控訴人の所得金額を算出したものでないことの証拠である。と主張するが、別表一、二記載の金額は右更正決定に対する審査決定があつた後、被控訴人が更に整理検討した後に算出した金額として主張しているものであることは明らかであるから(原判決一九枚目表五行目より七行目までの記載参照)、前記所得金額が右各更正決定の金額と相違することは怪しむにたらず、したがつてまた、右金額の相違により、右各更正決定の所得額が資産負債増減法によりなされたものではない、と速断はできない。また成立に争のない甲第二〇、二一号証の各一、乙第一九、二〇号証の各一、二、四によると、昭和三一年分、同三二年分の各営業所得事後調査表は、これを例えば昭和三二年分の更正決定についての調査表(乙第一九号証の二)についてみると、まず控訴人の売上金額決算額欄の金額一〇、七八万〇、五九三円を一応そのままにしておき、公租公課以下専従者控除までの決算額を、被控訴人の調査に基き、調査額欄記載のとおりそれぞれ一部否認し、その否認額の総額五〇万九〇五三円より、雑収入の過大計上額一、一〇六円を差引き、売上金額外の増加所得額五〇万七、九四七円を算出し、これに控訴人の収支計算に基く所得決算額二万三、五八六円を加算した四二万七、三八六円を、資産負債調(乙第一九号証の四)により算出した控訴人の昭和三二年分の総所得額九五万八、九一九円より差引き、その差額四二万七、三八六円を、前記控訴人の売上決算額一〇、七八万〇、五九三円に加算し、合計金一一二〇万七、九七九円を、同年度の控訴人の売上金額としたものであること、同年分の再調査決定についての調査表(乙第一九号証の一)は、さらに前記更正決定の調査表(乙第一九号証の二)の経費の科目金額に若干の修正を加えたものであること、また昭和三一年分の更正決定、再調査決定の調査表(乙第二〇号証の一、二)も同年分の資産負債調(乙第二〇号証の四)により算出した控訴人の同年分の総所得額を基礎に、昭和三二年分についての前記方法と同様の方法により控訴人の収支各科目の決算額を調査額欄記載のとおりに変更したものであること、換言すれば各営業所得事後調査表(乙第一九、二〇号証の各一、二)は、まず資産負債増減法により、控訴人の昭和三一年分、昭和三二年分の総所得額を算出し、これを控訴人の収支計算(控訴人主張の各決算額)に一応配分したものに過ぎないものであることが、それぞれ認められる。そうだとすると、右各調査表の存在は、本件昭和三一年分、同三二年分の控訴人所得額更正決定、再調査決定が収支計算法により算出されたことの証拠となるものではない。

そうだとすると控訴人主張の事実によつては、控訴人が青色申告備付帳簿書類に虚偽の記載をしていないと断定することはできないといわざるを得ない。

四、以上認定事実によれば、本件青色申告(青色申告書提出承認)取消処分は適法である、ということができるから、控訴人の本訴請求中、右処分の取消を求める部分は失当として棄却すべきである。

C  昭和三三年一二月六日付の昭和三一年分、同三二年分所得税更正決定の当否

一、次に右昭和三一年分および昭和三二年分所得税更正決定の取消請求の当否につき審究する。被控訴人が昭和三三年一二月六日控訴人に対し、昭和三一年分総所得金額を七六万一、六〇〇円に、同三二年分を九五万八、九一九円に更正決定し控訴人に通知したこと、控訴人が右決定に対し被控訴人に対し再調査の請求をしたところ、被控訴人が昭和三四年三月二日付決定で昭和三一年分総所得金額を六八万四、九〇七円、同三二年分を、七六万五、三四一円に更正し、その頃控訴人に通知したこと、控訴人は更に訴外熊本国税局長に対し審査請求をしたところ、同訴外人が昭和三四年一一月一一日付決定で、昭和三一年分について総所得金額を六四万二、〇二一円に更正し、同三二年分について審査請求を棄却し、翌一二日控訴人に対し右決定の通知をしたことは、いずれも当事者間に争がない。(したがつて本件各所得額更正決定は、昭和三一年分については六四万二、〇二一円、昭和三二年分については七六万五、三四一円と変更されたことになるから、以下右所得額認定の当否につき判断することとなる。)

二、控訴人は(一)被控訴人が控訴人を青色申告書提出承認をうけないものとして更正決定をしたのは違法である。青色申告申請に対する取消処分が青色申告書提出承認に対する取消処あだとしても、被控訴人が取消したのは昭和三一年分のみで分る。従つて被控訴人が昭和三二年分について更正決定をしたのは違法である。右処分が昭和三一年分以後の取消をも含むとするならば、右処分の通知書に昭和三一年分青色申告申請に対する取消と表示して右処分の通知には、重大且つ明白な瑕疵がある。(二)右処分の通知書は理由の附記を欠く。よつて本件各更正決定は違法であるから取消さるべきであると主張する。しかしながら当裁判所は控訴人の右主張は理由がないと判断する。その理由は、右(一)につき、後記のとおり附加するほか、原判決二四枚目裏三行目より末行目までの記載と、同(二)につき同二五枚目表三行目より末行目までの記載と、それぞれ同一であるから、ここに右記載部分を引用する。

所得税法第二六条の三第一〇項によれば、同項所定の事実がある場合、その事実があつたと認められる時までさかのぼつてその承認を取り消すことができ、その事実のあつた時以後に提出した青色申告書は青色申告書以外の申告書とみなされる。したがつて本件において昭和三一年分の青色申告書提出承認のみを取り消せば重ねて昭和三二年分以後の右承認を取り消す必要がないわけである。被控訴人が前記通知書に「昭和三一年分所得税の青色申告申請(青色申告書提出承認取消の意であることはさきに認定したとおりでおる。)を取消す」旨記載し、昭和三一年分以後の青色申告申請を取り消す。」と記載しなかつたのは当然で、何ら誤記ではないというべきである。よつて右処分の通知に重大且つ明白な瑕疵がある、との控訴人の主張は失当である。

三、次に控訴人の昭和三一年分昭和三二年分の所得額につき審究するに、昭和三一年分は七二万七、九二四円、昭和三二年分は七九万〇、四五九円である、と認める。その理由は下記のとおり附加訂正するほか、原判決二五枚目裏五項以下同三〇枚目裏六行目までの記載と同一であるからこれをここに引用する。

(一)  原判決二五枚目裏九行目より一四行目までを削除し、これに代え下記記載を挿入する。

そこで右算出方法により所得を検討する。被控訴人が控訴人の昭和三一年分、昭和三二年分の各所得額算出の基礎として主張する別表一、同二の被控訴人主張欄記載の各科目及びその金額(評価額)は、別表六の被控訴人主張欄記載の各科目及びその金額を除き当事者間に争がない。

(二)  原判決理由欄五項中の(3) 未払金、(4) 予り金、(8) 専従者給料の各項目の判示中それぞれ「原告において明らかに争わたいから自白したものとみなす。」とあるのを、「当事者間に争がない。」と訂正する。

(三)  原判決二七枚目より、同二八枚目表二行目までを削除し、これに代え下記記載を挿入する。

6 家事関連費について

控訴人が昭和三二年度に家事関連費として一万六、七八〇円を支出し、同年度の所得税確定申告に際し、これを経費として計上していることは当事者間に争がない。前顕乙第一九号証の二、当審証人若松敏夫の証言によると、右家事関連費の内訳は、昭和三一年以前の不動産取得税三、九七〇円、事業に関係のない家族の旅費七、三〇〇円、同じく福利厚生費五、五一〇円であつて、これらは経費に計上すべきものではないから、被控訴人がこれを否認したのは正当である。

(四)  原判決二八枚目表五行目下から六字目より九行目までを削除し、これに代え「当審証人若松敏夫の証言によると、控訴人が昭和三二年八月から同年一二月までの五か月間に、青色申告備付帳簿記載の生活費以外に、生活費として二二万九、八八六円を支出していることが認められる。」と挿入する。

(五)  原判決理由欄五項中の(9) 雑所得の項に「原告において明らかに争わないからこれを自白したものとみなす。」とあるのを「成立(原本の存在、及び原本の写真であること共)に争のない乙第八号証の一ないし三、同第九号証の一ないし七、一〇によりこれを認めることができる。」と訂正する。

(六)  原判決理由欄五項中の(10)の項目に、「原告において明らかに争わないから自白したものとみなす。」とあるのを、「成立に争のない(原本の存在及び原本の写真であること共)乙七号証の一ないし六、同第八号証の一ないし三、同第一〇号証の三、六、一一、一四、一八、二四、同第一一号証の三、九、一三、一四、同第一九、二〇号証の各四、弁論の全趣旨によつて成立を認める甲第二〇号証の五により、これを認めることができる。」と訂正する。

四、そうすると被控訴人が更正決定により昭和三一年分所得金額を六四万二、〇二一円(熊本国税局長の審査決定により同額に変更)、昭和三二年分を七六万五、三四一円(被控訴人の再調査決定により同額に変更)としたのは何等違法ではないから、本件各所得税更正決定の取消を求める控訴人の請求は失当として棄却すべきである。

D  結論

よつて以上の結論と結果において同一に帰する原判決は相当であり、本件控訴はすべて理由がないから、これを棄却することとし控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 原田一隆 野田栄一 宮瀬洋一)

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